いままで、マリモの分類は、細胞の大きさや糸状体の形状、生活様式などを基準におこなわれてきました。そして、マリモの分類については、研究者によって様々な意見がありました。
遺伝子の本体であるDNAを用いた系統解析によって、マリモの分類に関する多くの謎や混乱が解決しました。まだ、課題もたくさんありますが、明らかになったことを紹介します。
マリモの分類について、今まで不明・あいまいだったこと
- 阿寒湖の中の、丸いマリモと、岩に着生しているフトヒメマリモとよばれた藻の関係
- 日本国内の複数の湖沼で報告されているマリモ類は、複数の種類か単一種か
- ヨーロッパ産のマリモと日本産のマリモは同種かどうか
- ヨーロッパの複数の湖に産するマリモは同種かどうか
日本産マリモ類を用いた解析から判ったこと
阿寒湖の中の、丸いマリモと、岩に着生しているフトヒメマリモは同種 (マリモ)である。
日本国内の複数の湖沼で報告されているマリモ類は、マリモとタテヤ ママリモ(富山県立山町で最初に発見された)の2種に分けられ、それ ぞれ複数の湖沼に分布している。
マリモ、タテヤママリモ等は、その他のシオグサ目とは独立した単系統群(共通の祖先をもつ、遺伝的にまとまったグループ)を形成する。
18SrRNA遺伝子領域を用いて解析したマリモと近縁種の系統関係。
数字はブートストラップ値。属名は従来の分類に従っている。
(羽生田・植田:マリモはどこから来たのか?, 遺伝53(7)39-44(1999)より引用)
マリモの近縁種であることがわかったアオミソウ
また、1999,2000年のヨーロッパ調査で明らかになったこと(論文未発表)
- ヨーロッパの幾つかの湖沼のマリモは、日本のマリモと同一種である。
- この中には、リンネが最初に記載した、スウェーデン、ダンネモーラ湖のマリモも含まれる。
これらの結果を整理すると、
- マリモは、国内の複数の湖沼に分布する。
- 球状マリモ以外に、着生や不定形の団塊状で生活する、多様な生活型をもつ。
- マリモの近縁種、タテヤママリモが確認された。
- 日本のマリモとヨーロッパのマリモは同種であることが確認された。
- 従来はシオグサ属に分類されていたが、それとは全く異なる、独立した系統であることが判った。
これらの知見に基づき、学名も再検討が必要になりました。
DNAによる系統解析 | マリモの分布 | マリモの学名 | マリモの多様な生活型