マリモとは何か
<マリモ>をインターネットで検索してみると、「球状の集合体を作ることで知られる淡水生の緑藻類の一種」と出ています。今日、マリモがウニの仲間と思っている人はほとんどいないでしょうが、一方で「淡水生の緑藻類の一種」と言われてもピンとこないかも知れません。
実は、緑藻類は意外に身近な生物で、焼きそばやお好み焼きに欠かせないアオノリ、海水浴に行くとよく砂浜に打ち上げられているアオサ、用水路や湖沼のコンクリート壁の上に付着しているカモジシオグサ、浅い池の底に沈んでいるアオミドロなど、すぐに思いつく種類は少なくありません。
マリモはこのうちの、カモジシオグサに最も近く、枝分かれした体のつくりもよく似ています。実際、近年まで、形の類似性を根拠に、マリモはカモジシオグサに近い種類であると考えられてきました(しかし、DNAを用いた研究によって、マリモはカモジシオグサが属するシオグサ科のメンバーではなく、球化する性質を備えた何種類かの緑藻類からなる“マリモ科”とでもよぶべき未知のグループに含まれることが最近になって明らかになっています)。
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体のつくりがよく似ているため、
最近までマリモに近縁と考えられていた
カモジシオグサ
(阿寒湖チュウルイ島で撮影) |
マリモは光を食べている
これら緑藻類はいずれも、“緑色をした藻”というその名のとおり、陸上にすむ植物の葉っぱと同じ色をしています。葉っぱが緑色なのは、いうまでもなく細胞の中にクロロフィルとよばれる緑色の色素を有した葉緑体があるからに他なりません。マリモを含む緑藻類も同じクロロフィルを持っているのです。
そして、葉緑体は光合成作用によって水と二酸化炭素から糖をつくり出します。こうしてつくられた糖は、生きてゆくためのエネルギー源として、あるいは体をつくる原材料として利用されます。ですから、緑藻類をはじめとして、光合成を行うすべての植物は光を食べて生きていると言ってかまわないでしょう。
けれども一般に、緑藻類は陸上植物における葉っぱのような光合成のための特別な器官をもってはいません。体全体に葉緑体が分散しており、したがって体全体で光合成しているのです。マリモの場合も同様で、枝分かれした灌木状の体のいたるところに葉緑体が存在しており、いわば「体全体で光を食べている」ことになります。
前回、「マリモの口はどこにありますか?」とか、「マリモは何を食べますか?」という質問がしばしば寄せられると述べましたが、「マリモに口はないけれど、全身で光を浴びて糖をつくって生きている」とお答えしたいと思います。
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