阿寒湖のマリモが国の特別天然記念物に指定されているのは、よくご存知のことと思います。マリモはまた、環境省および水産庁のレッドデータブックで絶滅危惧種にも指定されており、阿寒湖だけでなく国内に生育するマリモの生育状況は悪化の一途をたどっているのが現状です。
阿寒湖では過去1世紀のあいだ、森林伐採や電源開発、観光開発などの影響によって、マリモがいく度か大きな危機に見舞われており、早くから様々な保護対策が施されてきました(過去のマリモ保護の取り組みについては年表をご覧下さい)。しかし、今日なお楽観できる状況にはなく、現在でも次のような活動が続けられています。
1.盗採防止活動
阿寒湖のマリモは法律によって保護が義務づけられており、許可なく移動したり持ち出したりすると罰せられます。にもかかわらず、阿寒湖では長くマリモの盗採が絶えず、最近では2006年にマリモが盗み取られる事件が発生しています。
このため地元では、半世紀前からマリモ群生地の近くにマリモ監視舎をもうけ、専門の職員(マリモ監視人)を配置して盗採防止活動に当たらせているほか、2006年から釧路市教育委員会や環境省、特別天然記念物「阿寒湖のマリモ」保護会などが協力して夜間の巡視活動や普及啓発活動などを行っています。
マリモ盗採防止をよびかける看板
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マリモ盗採防止シンポジウム(2007年7月)
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2.打ち上げられたマリモの保全活動
阿寒湖のマリモ群生地のひとつ、チュウルイ湾では、浅瀬に分布していた球状マリモが波浪によって大きく動かされ、大量に湖岸に打ち上げられることがあります。打ち上げそのものは自然現象であり、打ち上げられる過程で壊されたマリモの集塊の多くは再び生長を始めます。
しかし、湖岸に取り残されて乾燥あるいは凍結してしまう可能性がある場合は、枯死を未然に防ぐべく、関係機関や地域住民が中心となってマリモを沖合へ移動させる作業を行っています。
チュウルイ湾の湖岸に打ち上げられた
マリモ(2002年10月)
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湖岸に打ち上げられたマリモを
沖合に移動させる作業(2002年11月)
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3.特別天然記念物「阿寒湖のマリモ」保護会
◆マリモ保護会の歴史
特別天然記念物「阿寒湖のマリモ」保護会(通称「マリモ保護会」)は、1950年に結成されたマリモ愛護会を母体とし、その後、マリモ保存会(1964年)、マリモ保護会(1979年)と名称を変えながら組織を発展させ、今日にいたっています(現会長は松岡尚幸)。
◆マリモ保護会の主な活動
上述した、マリモの盗採防止巡視や打ち上げられたマリモの湖への返還作業の他、次のような活動をくり広げています。
- 調査研究活動の共同実施・支援
- 地元の小中学生を対象としたマリモ生育地観察会の実施
氷上から‘のぞきめがね’で見た湖底のマリモの様子
- マリモ祭り講演会および観察会の開催
- 「マリモの唄」歌碑の建立
40周年記念誌
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歌碑建立記念誌
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◆ラムサール条約登録湿地保全事業支援助成制度に採択
2010年10月、特別天然記念物「阿寒湖のマリモ」保護会が、財団法人北海道環境財団の「ラムサール条約登録湿地保全事業支援助成制度」に採択されました。この制度はアサヒビール株式会社が全国で展開しているアサヒスーパードライ「うまい!を明日へ!プロジェクト」の一環として売上金の一部を北海道環境財団に寄託し、北海道内のラムサール条約登録湿地の保全活動に取り組んでいる団体に活動資金を助成しようというものです。2005年に同湿地に登録された阿寒湖では、現在、特別天然記念物「阿寒湖のマリモ」保護会などが中心になって児童生徒によるマリモの保護育成試験や特定外来生物ウチダザリガニが在来生物に及ぼす影響調査が行われており、今回の助成金を活用して野外活動に欠かせない胴長やフィールドジャケット、また調査活動に用いるハンディマイクロスコープや水中カメラなどを整備することができました。
4.マリモ保護対策の歴史
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